努力が報われなくなる可能性

2011.09.08

年が明けた一月、開講早々、予備校のカウンセリングルームにHさんはやってきた。入試本番の一ヶ月前である。予約の際に彼女はキャンセルの仕方まで窓口で聞いたそうだ。几帳面な性格がそんなところにも表れている。目のぱっちりした聡明そうな学生で、小柄で細身の可愛らしい頑張り屋さんという感じだった。彼女は、時折、うつむいて下唇を噛んでいた。うまくいかない悔しい気持ちと、我慢強い頑張りやさん的な性格がうかがえた。そんな心理も汲み、カウンセリングルームで少しばかり弱音を吐かせ、一方では自信をつけさせる必要があると思われた。どこかで自信を回復しなければ息抜きもできない。申込用紙に記入された学生番号から、文科系最上位クラスに所属しい成績が急上昇していたことが分かった。その時期の模擬試験では、第一志望の合格可能性が常に八〇パーセントを突破していた。これだけの力があるのに、「私は無理がきかないので、ゆっくりとしか勉強できない。朝寝坊するたびに焦ってしまい、ますます勉強に集中できない。記憶力が極端に落ちてきた。簡単な単語を忘れると焦る。後一ヶ月しかない。このままでは、また大学に落ちてしまう」という不安感や焦燥感にさいなまれていた。精神医学的には軽症といえるが、悩みは深刻である。実際、このような精神状態のままでは実力が発揮できず、努力が報われなくなる可能性も高かった。