翻訳者は値段が高い人の方がよい

2011.08.05

外資系のコンサルタント会社が一年かけた調査の成果を報告書にまとめた。これを翻訳して日本の顧客に提出するという。信頼できる翻訳者として紹介された人に連絡して見積もりを求めたら、以前に発注した翻訳会社とくらべて二倍以上の金額を提示された。報告書は分厚いので、総額は馬鹿にならない。あまりに高いように思えたので、半分は間違いなく支払うが、残り部分は仕事が終わってから交渉して決めようと提案したが、にべもなく断られた。そこで、翻訳会社数社から合い見積もりをとった。結局、以前の発注先よりさらに安い価格で発注できた。経費を節約できて喜んでいたが、納品された翻訳は無残なものだった。時間がないのでそのまま顧客に提出したが、悔いが残る結果になったという。これに似た例はいくらでもころかっている。高いコストをかけて作成したり獲得した原文の翻訳を、価格を決め手に発注しているのである。例にあげたコンサルタント会社の場合には、おそらく年俸一千万円を軽く超える高給取りが何人も一年がかりで調査し、研究した成果が、報告書の翻訳によって評価される仕組みになっていた。調査と研究にかかった経費全体からみれば誤差の範囲内でしかない金額を節約しようとした結果、翻訳学習者に練習材料を提供して、しかも翻訳料を払うことになった。フランスの三つ星レストランのシェフが作った料理を、時給七百五十円の高校生のアルバイトが紙皿に盛りつけて客に出しているようなものだ。発注者はなぜこの点に、気づかないのだろうか。