競売物件の占有者に対する行動

2011.07.21

私は、平成6年春、ふたつ目の競売物件を入手しました。占有者は、元所有者ではなく得体の知れない人物。最初の競売で手に入れた不動産を無事処理し、私の鼻息は、いやが上にも荒くなっています。その物件は、マンションの3階にありました。「値段からすれば、いいほうだろう」と、自己満足。電気のメーターボックスの回転盤から、中に人がいることがうかがえます。「すいません。私、このマンション買ったFです。すいません、誰かいないですか」私は、呼び鈴を押すと、大声を上げながらドアを連打しました。マニュアル通りの「威圧」です。使用する言葉は暴力的なものではありません。しかし、声の音量は大きく、ドアを叩く回数も強さも通常とは違います。第一印象を強く印象付けるため、わざと演出しているのです。「はい、ちょっと待って。はい」中から声が聞こえます。ガタッと鍵が外れる音がしました。私は、もう一度ドアを叩きます。中から出てきたのは、茶髪の、痩せた風采の上がらない少年でした。「何?」「ここ買ったFです。あなたは、なぜここにいるのですか」私は、ゆっくりと大きな声で質問します。「何でって、住んでいるだけ。親父に聞いてくれよ」「私、耳が悪い。何て言いました?」「親父に聞けって言ったんだよ」「えっ、オ、ヤ、ジ。どこにいますか」私が演じたのは、耳が悪く、頭の弱い、融通の利かない男です。「知らねえ、俺だって知りたいよ」「いつ、ここから出ますか」「わからねえヤツだな。俺は知らねえ。親父はどこ行ったかわからねえ。帰れ」「電話番号は何番ですか」少年は、私に帰ってほしいからか、電話番号を教えました。私は、その後、父親の名前や職業などを粘り強く聞き出し、マンションを後にしました。

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